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手のかかる子は、関わり方で変わりやすい?

 コ ラ ム 

2026年7月14日

よくも悪くも、周囲の影響が「表れやすい子」の話

日々子供たちと接していると、本当にいろいろな性格の子がいるなぁと感じます。


説明を最後まで聞く前に手が動き出す子。

間違えることをとても気にする慎重な子。

大人の期待に一生懸命応えようとする優しい子。


同じ声かけをしても、子供によって受け取り方はまったく違います。

もっとも、「性格に合わせて関わり方を変えたほうがよい」こと自体は、研究を持ち出すまでもない当たり前の話です。

私が知りたかったのは、もう一歩具体的なことでした。


どんな気質の子が、どんな関わりの影響を「特に」受けやすいのか。


これについて、面白い研究があります。




影響が「表れやすい子」と「表れにくい子」

心理学に「差次感受性」という考え方があります。

簡単に言うと、周囲の関わりの影響が表れやすい子と、表れにくい子がいる、というものです。

84件の研究をまとめた、この分野の代表的なメタ分析(Slagt et al., 2016)では、子供のいくつかの気質と保護者の関わり方の組み合わせが、その後の行動や社会性などとどう関係するかが検討されました。

その中で、感情の反応が強い、なだめにくい、新しい環境への適応に時間がかかる、といった特徴をあわせ持つ「難しい気質」と分類された子は、そうした特徴が少ない子に比べて、次の両方の傾向が見られました。


①厳しい・否定的な関わりと、その後の問題との関連が強い

②温かく適切な関わりと、その後の良好な発達との関連も強い


つまり、大人が「手がかかる」と感じやすい子は、単に「問題が起きやすい子」なのではなく、良くも悪くも、周囲の関わりが表れやすい子である可能性がある、ということです。

ただし、確認された差は全体として小さく、研究の大半は観察的なものなので、「親の関わりが子供を変えた」と因果関係まで断定できるわけではありません。

子供の側の反応が、大人の厳しい対応や手厚い対応を引き出している可能性もあります。

また、ここでいう「難しい気質」は、単に活発でやんちゃ、という意味ではないことにも注意が必要です。


それでも、

「この子は何度叱っても直らない」ではなく、「この子は、関わり方の影響が表れやすいタイプなのかもしれない」


と見方を変えてみる価値は、十分にあると思います。




私自身、よく叱られる子供でした

ここからは、論文の結論ではなく、私自身の話です。

実は私も、子供の頃はよく叱られたり、注意されたりする子供でした。

思いついたら、先に体が動いてしまうのです。


KASICOで子供たちを見ていても、エネルギーのある子ほど先に行動してしまい、注意を受ける場面はよくあります。

ただ、そういう子たちは、叱る回数を増やすより、伝え方を変えたほうが動きが変わることも多いのです。

例えば、


「最後まで集中してやりなさい」


ではなく、


「まず、この3問だけは席を立たずにやってみよう」


行動力を叱って抑え込むのではなく、そのエネルギーの向け先を具体的に示す

かつての自分がしてほしかったのも、こういう関わりだったのだろうと思います。




むしろ心配なのは「心配のない子」

もうひとつ、これも私がKASICOで感じていることですが、気になるのは、一見「心配のない子」に見える優しい子たちです。

大人の話をよく聞き、友達に譲ることができ、お願いされたことにも一生懸命取り組む。

表面上は何の問題もありません。


ただ、よく従ってくれる子ほど、

「本当は嫌だった」「実は分かっていなかった」「疲れていた」

という気持ちが表に出にくいことがあります。


特に、教育に熱心な保護者様と、期待に応えようとする優しい子の組み合わせは、外からはとてもうまくいっているように見えます。

宿題もする。習い事にも行く。成績も悪くない。

しかし、本人が「自分はどうしたいか」ではなく、「お父さんお母さんが喜ぶ答えは何か」を優先する癖がついていないかは、ときどき立ち止まって確認したいところです。


親の関わりが強すぎる場合に何が起きるかは、以前のコラム「親の『やる気』と子の『やる気』」でも書いています。




個性は、そのままでは強みにならない

最近は「子供の個性を伸ばそう」とよく言われます。

私も、活発な子を無理におとなしくさせる必要はないと考えています。


ただし、個性を尊重することと、現れている行動をすべてそのまま認めることは別の話です。


どれだけ行動力があっても、説明を聞かずに始めてしまえば、集団の中では力を発揮できません。

どれだけ優しくても、自分の意見を一度も言えなければ、本人が苦しくなります。


個性が強みとして働くのは、社会の中で使える形に整えられたときだと考えています。


先ほどの研究でも、良い結果と結びついていた「温かい関わり」には、ただ優しく褒めることだけでなく、必要なルールや枠組みを示し、子供が自分でできるように支えることが含まれていました。


温かさと枠組みは、対立するものではないのです。


子供の自然な性質を尊重する教育の古典といえば、ルソーの『エミール』ですが、あの本も、子供を好きなように放置することを説いた本ではありません。

家庭教師は、子供が「自分で気づき、自分で学んだ」と感じられるように、環境や経験を周到に整えています。

個性を尊重することと、大人が枠組みを用意しないことは、昔から別の話なのです。


活発な子には、行動力を消すのではなく、動く前に一度止まる力を。

優しい子には、我慢を増やすのではなく、相手を大切にしながら自分の気持ちも伝える力を。

KASICOでも、一人ひとりの性格を見ながら、どこまで声をかけ、どこから本人に任せるかを日々考えています。

いつも正解できるわけではなく、私たち大人も試行錯誤の連続です。

子供の性格に合わせるとは、子供の好きなようにさせることではありません。

その子が持って生まれた性質を、本人と周囲の両方にとって役立つ形に育てていくことなのだと考えています。

本コラムが皆様のご参考になれば幸いです。





参考文献

Slagt, M., Dubas, J. S., Deković, M., & van Aken, M. A. G.(2016)“Differences in Sensitivity to Parenting Depending on Child Temperament: A Meta-Analysis.”Psychological Bulletin, 142(10), 1068–1110.

ルソー, J.-J.(今野一雄 訳)『エミール』岩波文庫






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