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数感覚を育てる

 コ ラ ム 

2025年5月29日

~家庭でできる「数との親しさ」のはぐくみ方~

「算数が得意になってほしい」


そう願う保護者の方は多いと思います。


ただ、計算が速くなることや、テストの点を取ることだけが“算数ができる”ではありません。

それ以前に、育てておきたい大事な「土台」があります。

それが、数感覚(Number Sense)と呼ばれる力です。


今回は、「数感覚」とはどんな力なのか、そして、今からでもご家庭で育てていく方法について、研究の知見とあわせてお伝えします。



数感覚って何?

数感覚とは、「1、2、3…」と唱えられるかどうか、ではありません。

たとえば、


「5は2と3に分けられる」


「8は10より2小さい」


「7は5と2でできている」


といったように、数の大小・まとまり・構成などを、感覚的に捉えて扱う力のことを指します(Ghazali et al., 2019)。


この力は、赤ちゃんの頃から少しずつ芽生えはじめるとされており、のちの数や量に関する理解の基盤となる可能性があると考えられています(Feigenson et al., 2004)。



なぜ大事?数感覚が学力に与える影響

研究では、幼稚園の段階で数感覚がしっかりしている子は、その後の算数成績が高くなる傾向があることが分かっています(Jordan et al., 2009)。


しかもその影響は、単なる計算スピードだけではありません。

数量的な思考や文章題の読解といった、算数のさまざまな場面での理解と関係があることがわかっています。(Jordan et al., 2010)。



「今からでも間に合う?」──もちろんです

「うちはもう小学生だから、遅いのでは?」

そんな心配はいりません。


数感覚は、小学校低学年からでも十分に育てていける力です。


実際、1・2年生の段階で家庭内での数のやりとりがある子ほど、文章題や応用力に良い影響が見られることが報告されています(Mutaf-Yildiz et al., 2020; Skene et al., 2023)。



家庭でできる「さりげない関わり方」

ここで大切なのは、問題のように問いかけないことです。


わざわざ「これはいくつでしょう?」と聞かなくていいのです。

むしろ、そのような“テスト形式”では、

子どもは構えてしまい、「間違えたくない」とプレッシャーを感じてしまいます。


あくまで日常の中で、さりげなく数字に触れること

それだけで、子どもたちは自然と数の世界に親しんでいきます。


数感覚を育てる「声かけ」や「関わり」

以下のようなやりとりは、研究的にも効果があるとされています(Skene et al., 2023)。


● おやつの場面で

「2人で分けるとしたら、どうしようか?」

「なんとなく、こっちのほうが多い気がするけど、どうかな?」


問いかけというより、“気づき合う会話”を意識すると、自然と数に向かう時間になります。


● 料理中やお買い物中に

「卵があと3つだね」

「2個で100円ってことは、1個だと…?」


生活に根差したやりとりが、抽象的な数字の意味を深めてくれます。


● 遊びや移動中に

「この階段、何段あると思う?」

「この2枚で6ができそう?」(トランプやカードゲーム中)


大切なのは、正解を求めないこと。

「へぇ〜、そう思ったんだね」「おもしろい考えだね」と受け止めながら、

考えること自体を楽しく感じられるようにしてあげてください。



お子さんの“今”を知るには

「うちの子、どれくらい数の感覚があるのかな?」

そう感じたときも、“チェック”する必要はありません。


おやつの分け方や、階段の数、トランプのやりとりの中で、

ふとした会話の中から、自然に見えてくるものです。


「2つと3つでいくつになるかな?」

「あと何段で10段かな?」


…といった問いかけに対して、

子どもがどう考え、どんな答えを返すかを観察してみてください。


もし迷っていたり、答えがずれていたとしても、それは「今の位置」がわかる貴重なヒントです。

無理に正そうとせず、「一緒に考える」ことそのものが、数感覚を育てる時間になります。



おわりに:勉強ではない“数字との親しさ”を

数の概念は、テキストで教え込むというより、

日常の中でゆっくりと育っていくものです。


だからこそ、特別な教材やアプリに頼るよりも、

日々の中で数に触れ、「一緒に考える」時間がなによりの学びになります。


「勉強させなきゃ」と構えず、

ご家庭の会話の中で、“さりげなく数字と出会うきっかけ”を、

親子で楽しんでいただけたらと思います。






<参考文献>

Feigenson, L., Dehaene, S., & Spelke, E. (2004). Core systems of number. Trends in Cognitive Sciences, 8(7), 307–314.


Jordan, N. C., Kaplan, D., Ramineni, C., & Locuniak, M. N. (2009). Early math matters: Kindergarten number competence and later mathematics outcomes. Developmental Psychology, 45(3), 850–867.


Jordan, N. C., Glutting, J., & Ramineni, C. (2010). The importance of number sense to mathematics achievement in first and third grades. Learning and Individual Differences, 20(2), 82–88.


Ghazali, M. A., Jamil, N., & Yusof, H. (2019). Number sense among primary school children: A review. Journal of Physics: Conference Series, 1366(1), 012084.


Mutaf-Yildiz, B., Sasanguie, D., De Smedt, B., & Reynvoet, B. (2020). Frequency of home numeracy activities is differentially related to basic number processing and calculation skills in kindergartners. Frontiers in Psychology, 11, 568512.


Skene, D. J., Bowes, J., Dowker, A., & Murphy, C. (2023). Supporting early numeracy through home learning: A review of effective practices. Early Childhood Education Journal, 51, 323–337.



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