

コ ラ ム
2025年8月6日
やりたくない気持ちの裏側にあるもの
小学生のお子さんが「親の言うことはやりたくない」と反発し、学校のプリントや宿題などの課題を嫌がる場面に直面することがあります。親としては「なぜ素直にやってくれないのだろう?」と悩みがつきません。
その裏には、家庭環境や親子関係、さらには子どもの心のメカニズムが大きく関係していることがあります。本稿では、過去の教育コラムや心理学の知見を踏まえ、そうした子どもの心理背景を探りつつ、親としてどのように関われば子どもが自発的に学習に向かえるのかを考えてみたいと思います。
家庭環境・親子関係が学習意欲に与える影響
まず押さえておきたいのは、家庭での環境や親子の関係性が子どもの学習意欲に与える影響です。家庭は子どもにとって最も身近な学びの場です。
たとえば、家庭に本や新聞があり親も読書を楽しんでいるような「学ぶことを自然に大切にする雰囲気」のある家では、子どもの学習意欲も育ちやすいと言われます。親が日頃から子どもの話に耳を傾け、勉強の内容についてポジティブに関心を示してあげるだけで、子どもは「応援してもらえている」と感じ、課題にも前向きに取り組みやすくなります。
一方で、家庭環境において過度なプレッシャーや親子間の緊張がある場合、子どもの「勉強への嫌悪感」が強まってしまうことがあります。親が毎日のように「早く宿題しなさい!」「なんでやらないの!」と叱責したり、成績や結果ばかりに目を向けたりしていると、子どもは家庭を「勉強させられる場所」と感じてしまいます。
「どうせまた怒られる」「やらない方が気持ちが楽」とネガティブな連想が働き、「お母さん(お父さん)に言われたことは素直に聞きたくない」という反発心も生まれやすくなります。つまり、親子の信頼関係や家庭の雰囲気が、子どもの課題への態度に直結すると言っても過言ではありません。
(ベネッセ教育総合研究所, 2019)
「やらされ感」と心理的リアクタンス
子どもが課題に消極的な理由としてしばしば指摘されるのが、「やらされ感」というキーワードです。やらされ感とは、文字通り「やらされているという感覚」のことで、「自分の意思でやっているのではなく、親に強いられて嫌々やっている」と感じている状態を指します。
このやらされ感が強いとき、子どもは課題そのものよりも「親から指示されていること自体」に抵抗を示すことがあります。心理学では、人は自分の自由や主体性が脅かされると、それを取り戻そうとして反発する傾向があるとされています(Brehm, 1966)。
小学生くらいになると自我が芽生え、自分で決めたいという欲求も出てきます。そこに親からの細かい指示や強制が重なると、「反抗することで自分の意思を示そう」とする気持ちが生まれてしまうのです。
男の子と女の子では反応が違う?
この「やらされ感」に対する反応には、性別による傾向の違いも見られます。
男の子は一般的に、「自分で決めたい」「命令されたくない」という自立志向が強く、強制的な言い方に対して明確な反発を示しやすい傾向があります。
一方、女の子は「関係性を壊したくない」「嫌われたくない」といった気持ちが先立ち、反発をあからさまに表に出すことは少ないですが、内心では納得していないこともあります。
つまり、男の子は態度や言動として「やらない」「今はやりたくない」と出やすく、女の子は表向きは従っているようでも「なんで今なの…」と気持ちがついてきていないケースもあるということです。
(Grolnick & Ryan, 1989)
自発的に学びに向かうための家庭の工夫
では、どうすれば子どもの「やらされ感」を減らし、自発的に学びに向かわせることができるのでしょうか。以下に、家庭で今日から実践できる工夫や声かけのヒントをご紹介します。
• 選択肢を与える:「宿題しなさい」ではなく、「宿題とお風呂、どっちを先にする?」「そろそろご飯だけど宿題しなくて大丈夫?」などの声掛けで、子供に「自分で決めて動いている」と感じるようにしていきましょう
• 声かけをポジティブに:「まだ終わってないの?」ではなく、「これ、ちょっと面白そうな問題だね。一緒にやってみる?」など、興味を引き出すような声かけに
• 過程を認める:「全部合ってた」よりも、「昨日わからなかった問題、今日は最後まで考えてたね」と、努力や工夫した部分をほめましょう
• 親も一緒に机に向かう:「お母さんも調べものしてるから、○○ちゃんもやってみる?」と、仲間意識を持たせてみてください
• 学習環境を整える:机の位置や音の環境、文房具など、子どもと一緒に整えるだけでも、やる気は変わってきます
(文部科学省, 2020)
親のかかわり方を見直すチェックポイント
子どもが「やりたくない」と感じる背景には、親の声かけや関わり方も影響していることがあります。以下のポイントを、ぜひご家庭での接し方のヒントにしてみてください。
• 「指示」ばかりになっていないか?
• 子どもの「いや」の奥にある気持ちに目を向けているか?
• 「完璧」を求めすぎていないか?
• 声かけや表情がイライラしたトーンになっていないか?
• 「勉強=罰」のように伝わっていないか?
(親野, 2015)
おわりに
子どもが「やりたくない」と感じてしまう背景には、親の関わり方や家庭の雰囲気、そして子どもの心の自立が関係しています。大切なのは、子どもの気持ちに寄り添いながら主体性を尊重すること。
「この子が自分から学びたくなるには、どんな声かけが合うだろう?」そう考えて関わることが、子どものやってみようという気持ちにつながっていきます。
参考文献
• Brehm, J. W. (1966). A Theory of Psychological Reactance
• Grolnick, W. S., & Ryan, R. M. (1989). Parent styles associated with children's self-regulation and competence in school. Journal of Educational Psychology, 81(2), 143–154
• ベネッセ教育総合研究所(2019)『学習意欲と家庭環境に関する調査報告』
• 文部科学省(2020)『主体的・対話的で深い学びを実現するために—家庭でできること—』
• 親野智可等(2015)『子どもが勉強しはじめる親の言葉かけ』PHP研究所
• 文部科学省. "令和3年度 全国学力・学習状況調査(児童生徒の生活習慣等)".
https://www.nier.go.jp/21chousakekkahoukoku/questionnaire_result/index.html
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