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「読める力」はすべての学力の土台になる

 コ ラ ム 

2025年7月24日

読解力の育て方、研究と実践から見えてきたこと

日々、子どもたちの学習を見ていると、「文章が読める」ことの大切さを改めて感じます。 国語の読解問題はもちろん、数学の文章題、理科や社会の資料問題、どれも“日本語を正しく読んで理解する力”が求められています。共通テストや中学入試でも記述量・情報量が年々増えており、表面の情報を追うだけでは太刀打ちできません。

つまり、**読解力はすべての科目に通じる「学びの基礎体力」**なのです。



読解力とは「情報を整理し、論理的につなげる力」

読解と聞くと、「語彙」や「漢字」「音読」のようなイメージを持たれる方も多いかもしれません。もちろんそれらも大切ですが、実際に入試やテストで問われているのは、「読んでどう理解したか」「どう考えをつなげたか」という論理的な読解力です。

心理言語学の研究でも、読解力は大きく次のように整理されています。

  1. 語彙や背景知識(土台となる情報の理解)

  2. 文構造の理解(文法や構文の知識)

  3. 推論力(省略されている意味を補う力)

  4. 論理的つながりの理解(接続語や段落構造をたどる力)

  5. 全体の要点把握・要約力(情報を整理・再構成する力)

特に④と⑤の力は、小学生の読解困難児に共通して弱い部分であることが、様々な研究でも明らかになっています(Cain et al., 2001/Kispál et al., 2020)。



なぜ読解力が育ちにくいのか?

現代の子どもたちは、情報量の多い環境の中で育っています。スマートフォンや動画コンテンツに触れる機会は多くても、言葉と言葉の“つながり”をじっくり追いかける体験は、どうしても不足しがちです。

たとえば、

  • 文と文の間の“関係”に気づかず、「なんとなく」で読んでしまう

  • 一文ずつは読めているが、「全体で何が言いたいか」が把握できない

といった様子は、日々の授業でもよく見られます。これらは決して「能力の差」ではなく、「どこを意識して読めばいいか」がまだつかめていないだけなのです。



家庭でもできる、読解力の土台づくり

では、こうした力はどうすれば育つのでしょうか。 専門的な指導だけでなく、日常の中のやりとりでも十分に支えることができます。 ここでは、保護者の方にも取り組みやすい2つの方法をご紹介します。


1. 「なぜそう思うの?」の問いかけで“筋道”を育てる

読解力の中でも特に重要なのが、「理由」を考える力です。文章を読んで「なにが起きたか」だけでなく、「なぜそうなったのか」に目を向ける練習が必要です。

たとえば絵本を読み終えたあと、

  • 「この登場人物、どうしてこうしたと思う?」

  • 「なんでそういう気持ちになったんだろうね」

といった問いかけをしてみてください。

子どもが「〜だから」と答えられれば、それはすでに因果関係を意識できている証拠。もしうまく言えなくても、保護者の方が「お母さん(お父さん)はこう感じたよ」と別の視点を伝えることで、思考の幅が広がります。

このような“会話のキャッチボール”が、論理的な読み取りの土台になります。


2. 「結局どういうこと?」で要点をつかむ練習を

もう一つ、非常に効果的なのが「要点を1文にまとめる力」を育てることです。これは、読解だけでなく作文・記述・プレゼンといったすべての言語活動の土台にもなります。

たとえば日常の中で、

  • テレビや本を見終わったときに「結局どういう話だった?」と聞いてみる

  • 子どもが長く話したあとに「つまりどういうことだったの?」とやさしくたずねてみる

このような問いかけを習慣にしていくことで、子どもは「何を伝えたらいいか」を自然と整理するようになります。

この“まとめる力”は、情報を取捨選択する力につながり、限られた時間で必要なことを伝える要領のよさにもつながっていきます。



読解力は「教え込む」より「気づかせる」

読解力の本質は、「頭の中で何が起きているか」を意識化することにあります。 だからこそ、「正しい読み方を教える」よりも、「考える視点に気づかせる」関わりが効果的なのです。

最近の研究でも、単に読書量を増やすだけでなく、読んだ内容について親子で対話をすることが、理解力を高めることも示されています(Snow & Uccelli, 2017)。



おわりに

読解力は、すぐに目に見える成果が出る分野ではありません。 けれども、丁寧に育てていくことで、やがて**すべての学びを支える「思考の軸」**となります。

「読める」という感覚が芽生えたとき、子どもたちの表情は見違えるように変わっていきます。

焦らず、日々の会話や読み聞かせの時間を、少しだけ「考える」方向へ。 それが、読解力を育てる一番の近道なのかもしれません。




参考文献






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学童塾KASICO(がくどうじゅくかしこ)

岡山市北区にて、放課後の学びと安心を両立する「学童保育+塾」のサービスを提供しています。遊びや対話を通して“考える力”を育てる、少人数制の学習支援型学童です。

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