

コ ラ ム
2025年12月4日
家庭で育つ“抽象化の力”と学習の深まり
子どもたちを見ていると、
学習がぐっと伸びる子には共通して「まとめる力」があります。
難しい言葉を使うなら“抽象化(ちゅうしょうか)思考”と呼ばれますが、
もっと身近な言い方をすると
「つまり、こういうことだよね?」と言える力。
この“まとめる力”がある子は、新しい学習にも、初めて見る問題にも、柔軟に対応しやすい傾向があります。
今日はこの「抽象化の力」が、なぜ学習に大きなメリットをもたらすのか。
また、家庭ではどんな会話がこの力を育てるのか。
研究を見ながら、一緒に考えてみたいと思います。
なぜ“抽象化”できる子は伸びるのか
「抽象化」というと難しく聞こえますが、要するに
いろいろな情報の“根っこ”を見つける力
のことです。
この力は学習でとても重要で、
教育心理学者 Bransford(2000)は、
原理を理解した子は、丸暗記の子より「3〜6倍」別の問題に応用できると述べています。
つまり、ただ覚えた知識ではなく、「この仕組みってこういうことだよね」という“核”をつかむ子は、
新しい問題に対しても迷いにくい。
私も指導の中で強く感じるのですが、こういった子は、教科をまたいでも学び方が安定します。
「構造」を理解する子は記憶にも強い
認知心理学の研究では、優秀な学習者は細かい事例ではなく“仕組み”に注意を向けることが示されています(Chi, 1981)。
仕組みをつかむと、細かい事実を「覚えよう」と努力しなくても、あとから自分で再構成できます。
たとえば算数で「なぜそうなるか」を理解した子は、公式を忘れても考え直すことができますし、国語でも文章の構造をつかめると読解が安定します。
学び方そのものが変わるのです。
家庭で育つ「抽象化思考」
では、この力はどうすれば育つのでしょうか。
ポイントは意外にも、“家庭での会話”です。
研究では、次のような会話をする家庭の子どもが
抽象化・因果推論・メタ認知で高い成長を示しています。
① 「どうして?」と理由を尋ねる
親がどうしてそう思ったの?
なんでこうなるんだろうね?
と理由を聞く家庭は、
子どもの推論力が高いことが知られています
(Fivush, 2006)。
“理由を言葉にする習慣”は、
子どもの中に「物事の根っこ」を探す癖をつくります。
② 「構造や仕組み」に触れる会話
これって、どういう仕組みになってるんだろう?
基本の決まりは何だろうね?
こういった“構造に目を向ける会話”がある家庭では、
子どもが物事を事例ではなく“原理”で覚える傾向があります
(Chi, 2000)。
③ 比較・分類の遊び
LaQや積み木、図鑑など、
“仲間分け”“違い探し”の要素がある遊びは、
抽象化にもっとも効果の高い遊びのひとつです
(Gentner, 1983)。
④ 「正解より説明」を大事にする
どうやってその答えになった?
どんな考え方で解いた?
これが“自分の考えを言語化する練習”になり、
学習の深さを支える土台になります
(Chi, 1994)。
まとめ
子どもが
「つまり、こういうことだよね?」
と自分でまとめられるようになると、
学習は一段階、質が変わります。
それは、知識の量ではなく、
知識の“扱い方”が変わるからです。
そしてその力は、特別な教材よりも、家庭の中のほんの小さな会話で育ちます。
KASICOでも、こういった力は非常に重視しており、
子供たちのかかわりの中でも声掛けや対話においても十分に注意して行うようにしています。
本コラムが、ご家庭でのお子様とのかかわりのヒントに慣れていれば幸いでございます。
参考文献
Bransford, J. D., Brown, A. L., & Cocking, R. R. (2000).How People Learn: Brain, Mind, Experience, and School. National Academy Press.https://doi.org/10.17226/9853
Chi, M. T. H., Feltovich, P. J., & Glaser, R. (1981).Categorization and representation of physics problems by experts and novices.Cognitive Science, 5(2), 121–152.https://doi.org/10.1207/s15516709cog0502_2
Chi, M. T. H. (1994).Eliciting self-explanations improves understanding.Cognitive Science, 18(3), 439–477.https://doi.org/10.1207/s15516709cog1803_3
Chi, M. T. H. (2000).Self-explaining expository texts: The dual process of generating inferences and repairing mental models.In R. Glaser (Ed.), Advances in Instructional Psychology (Vol. 5). Lawrence Erlbaum Associates.https://psycnet.apa.org/record/2000-08184-006
Fivush, R., Haden, C., & Reese, E. (2006).Elaborating on elaborations: Role of maternal reminiscing style in cognitive and socioemotional development.Child Development, 77(6), 1568–1588.https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2006.00960.x
Gentner, D. (1983).Structure-mapping: A theoretical framework for analogy.Cognitive Science, 7(2), 155–170.https://doi.org/10.1207/s15516709cog0702_3
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