コ ラ ム
2022年3月13日
自信のない子供たち
講師をやっていると新しい事や難しい事への挑戦を嫌がる子が多いなぁと感じることがよくあります。
そういった子にチャレンジしない理由を聞いてみると、「失敗しそう」、「自分にはできない」など“自分に自信が持てない”という理由がほとんどです。
実際、近年のアンケート調査をみてみても、日本人の子供の自己肯定感は46.5% (2019年度) と海外(軒並70%以上)と比べても非常に低く長年低空飛行をしています。
これは問題なのでしょうか?
一昔前であればこれは特に問題ではなかったかもしれません。
しかし、変化の激しいこの時代において、これは大きな問題であると言わざるを得ません。
例えば、野村総合研究所と英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究では10-20年後には日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能になるという試算が出されています。
つまり、今小学生の子供の約50%は将来、今は存在しない仕事に就く可能性が高いということです。
こうした状況の中で子供が新しいことに挑戦せず、殻に閉じこもってしまっていては、これからの新しい社会に順応していくことは難しくなるかもしれません。
ではどうすれば自己肯定感が高く、新しい物事にどんどん挑戦していく積極的な子供に育っていくのでしょうか?
今回は3点ほどご紹介したいと思います。
一つ目は“成功体験の積み重ね”です。
鹿毛(2013)は、Bandura の研究を引用して、 自己効力感は、①行為的情報(実際に課題を遂行すること)を通して成功体験をすると自己効力が高まるとしています。
人間というのは成功体験を積み重ねれば積み重なるほどそれが自信となり、新しい物事への挑戦をしやすくなっていくものです。
そのためには、小さい頃から「できた!」という経験を数多く積んでおくことが何より重要になってきます。
逆に小さい頃に難しすぎる問題にチャレンジし過ぎることは、「できない」「つらい」という思いをさせてしまう可能性があり、あまり望ましいことではありません。
小学校1年生から3年生のうちは基本的には簡単な問題を解いて、「できた」「自分にはできる」というような成功体験を積ませることがベストであると考えております。
二つ目は家での“声掛け”です。
自己肯定感が低い子供によく共通しているのが、ご家庭でネガティブな言葉を掛けられてるということです。
ネガティブな声掛けとは、例えば、算数テストの点が悪かった時の「算数が苦手なのね」といった声掛けや、お子様を他人に紹介するときの「うちの子はぜんぜんできなくて・・・。」といった声掛けです。
親にとっては謙遜や、悪気のない言葉かもしれませんが、お子様にとっては自分の認識そのものになってしまいます。
そして、この認識は長らく本人を縛ることになります。
「自分は算数が苦手だ」と思いこめば、難しい問題に直面したときに、何とか解いてやろうと粘り強く取り組まずに、「苦手だからできなくても仕方がない」といった思考に陥ってしまいます。
勉強が得意な子は「自分は勉強が得意だ」と無意識レベルで思い込んでいることがほとんどです。
だから難しい問題に直面した時、「〇〇が得意な自分ならできるはず。考え方が間違ってるか、何かを見逃してるに違いない。」と思い、問題の解き方を粘り強く探していきます。
こうした姿勢で勉強に取り組む子の学業成績が高くなることは言うまでもありません。
その他声掛けだけでもいろんな場面があるので、本件はまた別のコラムでまとめたいと思います。
自己肯定感を高める3つめのアプローチは“根拠のない自信”を持たせることです。
“根拠のない自信”というと何を考えているんだと思われるかもしれませんが、実はこれほどこれからの世の中を生きていくための強力な武器はありません。
最初のほうでも触れましたが、これからの時代の子供たちは誰も経験をしたことがない物事に挑戦していくことになります。
初めてやることに対して「自信を持て!」ということのほうが無理筋なのではないでしょうか?
しかし、世の中には初めてやることに対して根拠のない自信をもって望む人も存在しています。
例えば、ソフトバンクグループの創業者・孫正義氏は「最初にあったのは、夢とそして根拠のない自信だけ。」と言っています。
冷静に考えると、ほとんどの創業社長は他の人のやっていない新しいことをやるわけですから、“根拠のない自信”を持っていなければ始められるわけがありません。
また、転職などで別業界に飛び込みたいと思っている人もそうした“根拠のない自信”がないと身動きが取れなくなってしまいます。
では、どうやって“根拠のない自信”を育めばいいのでしょうか?
私は親が子供に与える“無条件の惜しみない愛”こそが子供の自信を育てる源泉となると考えています。
いろんなことにチャレンジし、失敗し、傷ついて帰ってきた子供を慰め、その子供に再び困難に立ち向かう勇気と活力を回復させてあげられるのは、最も身近な存在である親をおいてほかにいません。
「どんなことがあってもこの人は助けてくれる」
「どんな自分でも認めてサポートしてくれる」
こうした思いが無意識領域で育つと、子供はどんなことにも恐れず、勇敢に新しい物事にチャレンジしていけるようになります。
『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者であり、日米で20年以上教育現場に携わってきた船津徹さんは、『根拠のない自信』とは「親から愛されている」という実感であり、親が100%与えるもの』と喝破されています。
学童塾KASICOでは、お子様が自分に自信を持てるよう問題レベルの調整から声掛けに至るまで細心の注意を払って取り組んでおります。
また保護者様に対し、お子様への接し方を考える勉強会なども開催していく予定です。
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内閣府/特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html
内閣府/子供・若者白書について:https://www8.cao.go.jp/youth/suisin/hakusho.html
ベネッセ教育総合研究所|自己効力感が高い小・中学生はどのような子どもか
鹿毛雅治 2013 学習意欲の理論-動機づけの教育心理学 金子書房
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