コ ラ ム
2023年6月10日
「褒める」ことは難しい
皆様はお子様をよく褒めるほうでしょうか?
「褒めたことで子供がやる気になった」
「褒めたことで子供が望ましい行動をするようになった」
「褒めたことで子供の自己肯定感が高まった」
など、褒めたことでお子様がいい方向に行ったと実感されることもあるかもしれません。
ただ私は、「褒める」ことは子供をいい方向にも悪い方向にも持って行ってしまう、非常に難しく、注意して扱わなければならない行為であると認識しています。
今回は、褒め方とその効果について過去の研究をまとめたHenderlongらのレビュー(2002)を紐解きながら、子供を褒めるときに注意すべき点について、整理していきたいと思います。
① 真実味があるかどうか
子供との関係性にもよりますが、褒めたときに子供に「そうかな?」と思われるような褒め方は、効果がありません。
むしろ大げさにしすぎると後述しますが、相手に「自分をコントロールしようとしている」と感じられる可能性もあります。
褒めるときは、子供に納得してもらえる範囲の褒め方にしましょう。
② なにを褒めるのか注意する
「“伸びる子”と“伸びない子”の違い(その1)」のコラムで詳しく取り上げましたが、
才能や結果ばかりを褒めると、できないことから目を背け、努力や挑戦を嫌う子になってしまう可能性があります。
褒めるときはバランスを考えて、子供の努力、取り組み姿勢、結果までの過程について言及してあげましょう。
③ 子供をコントロールしようとしていないか
子供は誉め言葉の中から、大人が自分をコントロールしようとしているかということを敏感に察知します。
親としては、大げさな言葉、嘘、感情を使って子供をコントロールしたいと感じるかもしれませんが、
一旦、子供に「自分をコントロールしようとしている」と感じられると、その後の言葉を素直に受け入れてくれなくなったり、関係性がギクシャクしてしまう可能性があります。
仮に、うまくコントロールできたとしても、誉め言葉を期待しての行動なので、誉め言葉がない場合は、何もしない子になってしまいます。
これは以前コラムでも紹介しましたが、誉め言葉が「ごほうび」としての外発的モチベーションになっているからです。
心理学者の岸見一郎先生は、褒められて育った子がとる行動として、
「ゴミを拾う前に周りをちらっと見るようになる」と述べています。
これは、周りに自分がいいことをするのを見てくれる人がいるかどうか確認しているため、だと考えられています。(もちろん見てくれる人がいないとゴミは拾いません。)
褒めによるコントロールはこういった行動を助長する可能性があります。
長期的に望ましい行動を促したい場合は、共感、説明、行動をもって子供に納得してもらえるまで辛抱強く何度も諭していく以外ありません。
特に女の子は、大人のコントロールの意図を鋭く見抜くので注意が必要です。
④ 能力を比較していないか
「クラスで一番だったんだね!」
などの社会的比較による言葉は、短期的には子供を強く動機づけることがあるのは分かっています。
しかし、場所や比較対象が変われば、いつも1番でいることは難しくなってきます。
そうなると、長期的に見て、モチベーションが下がったり、心や体の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
ほかの人との比較ではなく、その子自身の頑張りや成長にフォーカスしてあげましょう。
以上、いかがだったでしょうか。
こういった注意事項が多いと褒めることに抵抗を感じるかもしれません。
ただそこまで難しく考えることはありません。
褒めとはすなわち子供に対する感心のようなものです。
コントロールの意図がなければ、子供の成長に喜び、子供に起きた出来事や感情に寄り添えるような純粋で肯定的な言葉がけになってくるものと思います。
本コラムが少しでも皆様の日々の参考になれていれば幸いです。
Henderlong J, Lepper MR. The effects of praise on children's intrinsic motivation: a review and synthesis. Psychol Bull. 2002 Sep;128(5):774-95. doi: 10.1037/0033-2909.128.5.774. PMID: 12206194.
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